泣きたくなるような気持を抱えて、誰もいない並木道を歩く。
木立を渡る風が、青葉を揺らす音だけを体に満たして歩く。
粘りのある濃い空気に、ぬるい肌をさらして歩いていく。
蠢くまだらな影の中に、私の影だけが伸びている。
人影も車もない道路で、砂粒のような月の光がしんと降り積もっている。
覆いかぶさるような暗闇に、ざらりとした感触のアスファルトが続いている。
私は一人きりを奥歯でかみしめて、体のしんまで染み込む幸福感を味わっている。
余裕の産物でしかない感情は好きだ。
こんな、どうしようもない衝動が好きだ。
寂しさは恋しさを呼んでくれるから。
木立を渡る風が、青葉を揺らす音だけを体に満たして歩く。
粘りのある濃い空気に、ぬるい肌をさらして歩いていく。
蠢くまだらな影の中に、私の影だけが伸びている。
人影も車もない道路で、砂粒のような月の光がしんと降り積もっている。
覆いかぶさるような暗闇に、ざらりとした感触のアスファルトが続いている。
私は一人きりを奥歯でかみしめて、体のしんまで染み込む幸福感を味わっている。
余裕の産物でしかない感情は好きだ。
こんな、どうしようもない衝動が好きだ。
寂しさは恋しさを呼んでくれるから。
好きだという気持ちが、こんなに滅茶苦茶なもので一体何の役に立つと。
嵐の中ただ一人立ちつくして、どこへも行けず荒れ狂う。
理性を削るように消費して、刺さるような苦しさだけを拡大再生産する。
感情に振り回される自分自身を制御できないのに、相手のことを思いやる余裕なんてどこにもない。
会いたくて、触れたくて、ただそれだけで。
こんな暴れまわるだけの感情を、一体何のために。
体の奥から心臓を食い破って出てきそうな、それを押し殺して何度も尋ねる。
いったい何のために。
嵐の中ただ一人立ちつくして、どこへも行けず荒れ狂う。
理性を削るように消費して、刺さるような苦しさだけを拡大再生産する。
感情に振り回される自分自身を制御できないのに、相手のことを思いやる余裕なんてどこにもない。
会いたくて、触れたくて、ただそれだけで。
こんな暴れまわるだけの感情を、一体何のために。
体の奥から心臓を食い破って出てきそうな、それを押し殺して何度も尋ねる。
いったい何のために。
胸一杯に詰まった重石が、喉の奥までせりあがる夜。
私はあの人のことを思って眠れずにいました。
どこにでもある、いつの時代にもある恋話。
単にあの人の相手が私ではなかった。ただそれだけのこと。
笑いかける優しい顔を思って胸が熱くなり、その視線の先に自分がいないことを思って凍りつく。
極端な温度は、どちらに触れようとも痛みを感じるものなのだと。
顔を覆った両手のなかに、自分の呼吸を聞きながら理解しました。
例えば私の気持ちが光であったなら、ふとそんなことを思うのです。
受け止められなかった思いは、まっすぐに空を通り抜け宇宙へ飛んでいくのでしょう。
いつかあの人を忘れた私が、老いさらばえて土にかえっても。
光であれば、どこまでも旅をしてくれる。形も色も、匂いさえも瞬間をそのままに。
いつかどこかの星が反射して、遠い未来に届くのでしょうか。
その瞬間の私の気持ちは、嘘偽りなく本当だったと、思ってくれるのでしょうか。
くだらない妄想を自嘲しながら思い浮かべて、私は胸の中心でまかれるブリキのネジを緩めるのです。
明日また、何もなかったように一日を迎えるために。
私はあの人のことを思って眠れずにいました。
どこにでもある、いつの時代にもある恋話。
単にあの人の相手が私ではなかった。ただそれだけのこと。
笑いかける優しい顔を思って胸が熱くなり、その視線の先に自分がいないことを思って凍りつく。
極端な温度は、どちらに触れようとも痛みを感じるものなのだと。
顔を覆った両手のなかに、自分の呼吸を聞きながら理解しました。
例えば私の気持ちが光であったなら、ふとそんなことを思うのです。
受け止められなかった思いは、まっすぐに空を通り抜け宇宙へ飛んでいくのでしょう。
いつかあの人を忘れた私が、老いさらばえて土にかえっても。
光であれば、どこまでも旅をしてくれる。形も色も、匂いさえも瞬間をそのままに。
いつかどこかの星が反射して、遠い未来に届くのでしょうか。
その瞬間の私の気持ちは、嘘偽りなく本当だったと、思ってくれるのでしょうか。
くだらない妄想を自嘲しながら思い浮かべて、私は胸の中心でまかれるブリキのネジを緩めるのです。
明日また、何もなかったように一日を迎えるために。
1 2